感度・特異度と陽性的中率・陰性的中率
医学臨床の検査キットなどの性能を評価する指標に、感度(sensitivity)と特異度(specificity)というものがあります。
例えばある病気の検査を調べるとき、実際に病気に罹っている人のうち陽性と出る割合を感度、病気に罹っていない人のうち陰性と出る割合を特異度と言います。
一般的に、感度と特異度が高い検査キットの信頼性が高いとされています。
しかし、そのような検査で陽性と出たからといって、必ずしも実際に病気に罹っている可能性が高いわけではないこともあります。
その説明をこれからします。
まずは言葉の説明を。
検査で陽性と出た人のうち実際に病気に罹っている人の割合を陽性的中率(Positive Predictive Value, PPV)、陰性と出た人のうち実際に罹っていない人の割合を陰性的中率(Negative Predictive Value, NPV)と言います。
次の表で感度・特異度とPPV・NPVの関係が一目でわかります。
検査 | 疾病あり | 疾病なし | (合計) |
---|---|---|---|
陽性 | a | b | m+ |
陰性 | c | d | m- |
(合計) | n+ | n- |
これは2×2分割表になっていますが、これまで出てきた4つの指標は次のような割合になります。
- 感度: a/n+
- 特異度: d/n-
- PPV: a/m+
- NPV: d/m-
分子はaとdなのですが、分母が違っていることが分かります。
これだけだったら何が違うのか分かりにくいので、実際の例を紹介します。
感度が90%・特異度も90%の検査を、次の2つの集団に当てはめた場合のPPVとNPVを計算してみます。
- 集団1:疾病ありが500人、疾病なしが500人、合計1000人
- PPV:90%
- NPV:90%
- 集団2:疾病ありが100人、疾病なしが900人、合計1000人
- PPV:50%
- NPV:99%
如何でしょうか?同じ性能の検査をしても当てはめる集団によって的中率が全く変わることがわかると思います。
これはベイズの定理からも説明できます。
集団での罹患率が事前確率で的中率が事後確率になるのです。
結局どういうことかというと、乱暴に言ってしまえば例えばがん検診で陽性と出るのと妊娠キットで陽性とでるのとは全く意味合いが違うということですww
これらの検査キットの性能が同じと仮定して、検査をする集団の事前確率がどうなっているのかを考えてみてくださいね。
集団で”そもそも患者がどれくらい居るのか”によって的中率は大きく変わります。